借金滞納

借金の消滅時効|長期滞納者がまず確認すべきこと

「借りたお金を返さなくても良い」とは不思議に思うかもしれませんが、法律では借金に対する時効が確かに認められています。

しかし、時効を成立させるためには、法律上必要な条件を満たさなければなりません。

ここでは、時効を成立させるための条件や流れ、必要な手続きなどについてご説明します。

借金の返済金額に大きく影響があることですので、一つずつ確認していきましょう。

また、借金の状況に応じて、時効が成立するかどうかは異なるため、弁護士・司法書士に相談のうえ、慎重に対応することをおすすめします。

借金の時効とは

時効の種類

借金の時効には、次の2種類があります。

借金の時効とは、「消滅時効」のことです。
この時効が成立した場合、借金をしても長期間返済することなく放置すると借金の支払義務が消滅することになります。

消滅時効一定期間権利を行使しなければ、その権利自体が消滅してしまう時効の制度
取得時効他人のものを一定期間自分のものと思って占有し続けることにより、所有権を取得できる時効の制度

なぜ時効が存在するのか?

借金とは、お金を貸した側から見ると、借金を「請求する権」になります。これは、あくまで権利の1つであるため、長期間行使しない場合、時効によって消滅します。

このような考え方があるため、借金を長期間支払っていない場合には、借金に時効が成立し、支払わなくて良くなるというわけです。

借金の消滅時効期間

滅時効期間はどのように決まるのか?

借金の消滅時効が成立する期間は、貸主/借主が商人であるかどうかによって決定されます。

貸主/借主のいずれも商人でない場合一般的な債権として10年(民法167条)
貸主/借主のいずれかが商法上の商人の場合商事債権として5年(商法522条)

貸主/借主のいずれも商人でない場合、民法が適用されます。この民法では、「債権は10年間行使しないときは、消滅する」と定められています(第167条1項)。つまり、借金の消滅時効は、原則として10年になります。

貸主/借主のいずれかが商法上の商人の場合、商法が優先されます。この商法では、「商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。」と定められています(第522条本文)。つまり、借金の消滅時効は5年になります。

(2020年4月1日:追記)2020年4月1日に民法改正が施行されました。この改正後は、商事債権の時効期間を5年間と定めている商法522条の規定が削除され、時効期間は、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、権利を行使することができる時から10年間」と定められます。

時効の起算日は?

一般的には、「最後の支払期日」から計算します。しかし、詳細は貸借契約によって異なるため、不安がある場合は、弁護士・司法書士に確認してもらいましょう。

債権の種類と消滅時効期間

借金(債権)の種類によって、消滅時効期間がどのように定められているのかを見ていきます。

消費者金融から借金をしている場合
この場合、消費者金融等が個人か法人かによって時効期間が異なります。これまで述べたように、お金を貸している消費者金融等が個が法人の場合、時効期間は5年です。一方で、個人の場合、時効期間は10年です。

信用金庫から借金をしている場合
裁判所の判例では、信用金庫は「商人ではない」とされています。したがって、信用金庫から借金をしている場合、時効期間は10年になります。

銀行から借金をしている場合
銀行は「商人」であるため、時効期間は5年になります。

住宅金融支援機構の住宅ローンの場合
住宅金融支援機構も信用金庫と同様に「商人ではない」とされています。したがって、時効期間は10年になります。

一般的には、このように定められていますが、正確な時効期間は状況によって異なる可能性がありますので、弁護士・司法書士に一度相談してみることをおすすめします。ここに記載されていない借金をされている方も別途相談をしてみましょう。

借金の時効が成立する条件

借金の時効が成立するために、次の2つが必要になります。

  1. 消滅時効期間を満たしている
  2. 時効制度を利用することを貸主に伝える

これらについて、順番に確認していきましょう

消滅時効期間を満たしているか確認を!

消滅時効が成立するためには、単に5年・10年の時間が経過すれば良いというわけではありません。

お金を貸した側に対して、時効を中断させる方法も定められています。この時効の中断がされると、今までの時効期間がすべてなかったことになります。

この「時効の中断」についても必ず確認しましょう。

時効の中断方法は3つ
時効の中断として、民法では次の3つの方法が定められています。

  • 請求
  • 承認
  • 差し押さえ

1. 請求
お金を貸した側が借りた側に、様々な「請求」をすることで時効を中断させることができます。

請求としては以下のようなものがあります。

  • 訴状の提出
  • 催促書類の提出
  • 支払催促
  • 調停申し立て
  • 即決和解申し立て

なお、各請求における時効中断の効力の詳細は、弁護士・司法書士に確認しましょう。

2. 承認
承認とは「借金している人に、借金の存在を認させる」ことです。

たとえば、1円でも借金の返済を行えば、その時点で借金を認めていることになりますので、時効が中断されます。

特に注意が必要な状況としては、債権回収会社などから取り立てがあった時です。債権回収会社から取り立てがあった時には、時効になっている借金もあります。しかし、安易に債権回収会社に直接連絡をしてしまったために、この「承認」をしてしまったという事例もあります。

3. 差し押さえ
お金を貸した側が訴訟や支払催促などを行い、裁判所が借りた側に対して差し押さえの強制執行が行われると、時効は中断します。

貸主に時効が成立したことを伝えましょう!(時効の援用)

お金を貸している側に対して「消滅時効が成立しているので、支払い義務は既に消滅しています」と意思表示をすることで初めて時効が成立します。

これを「時効の援用」と言いいます。

一般的には、「消滅時効をする」という通知を、確定日付が証明できる内容証明で郵送します。
(書類は郵便局の窓口で入手でき、書き方も窓口で教えてもらえます。)

時効成立までの流れ

時効成立までの流れは以下のようになります。

  1. 消滅時効期間が経過している
  2. 時効の中断がない
  3. 時効援用をしている
  4. 時効成立

時効成立によるデメリット

ここまで時効の成立のポイントについて説明してきましたが、時効成立にはデメリットもあります。

ここからは、時効に際して発生するデメリットについて確認していきましょう。

時効成立のデメリットは、大きく時効成立前と後に分けることができます。

時効成立前

時効が成立するまでの5・10年の間に発生するデメリットには以下のようなものがあります。

  • 精神的な負担が大きい
  • 借金が増える可能性もある

精神的な負担が大きい
「借金を「返していない…」、「時効が成立しなくなるのではないか…」、「時効期間が中断されないか…」といった自分ではどうしようもない不安を抱えながら生活するため、長期的に精神的なストレスに悩まされることになるでしょう

借金が増える可能性もある
当然ですが、時効が成立するまでは、借金がなくなるわけではありません。むしろ、利息や遅延金によって借金が増えることもありえます。これも精神的な負担となるでしょう。

時効成立後

時効が成立した後にも、実はデメリットがあります。

  • 5年間はブラックリストに記録が残る
  • 借金を踏み倒した企業とその関連企業ではずっとローンが組めない

5年間はブラックリストに記録が残る
時効が成立すると、クレジットカードの場合、個人信用情報機関に5年間はブラックリストとして記録が残ります。これにより、5年間はローンなどを組むことができなくなります。

※個人信用情報機関とは、各人のクレジット利用履歴などの信用情報を登録・管理しています。いわゆるブラックリストと呼ばれるものです。

借金を踏み倒した企業とその関連企業ではずっとローンが組めない
当然ですが、借金を踏み倒した企業とその関連企業においては、個人信用情報機関の記録に関係なく、悪徳顧客として登録されるため、一切ローンを組むことはできません。

時効の成立は難しい

法律として「時効」という制度が認められている以上、検討するべきでしょう。しかし、借金の取り立てをする債権回収会社などは、債権回収のプロであり、現実的に時効成立は難しいでしょう。

このように借金の時効が成立するには様々な制約と精神的負担があります。このような制約に耐えながら生活を送っていても、途中で見つかってしまうか、精神的に耐え切れずギブアップしてしまうか、もしくはそもそも債権者により時効がストップされているようなことも有ります。このような逃げるような生活では、根本的な解決とは言えないでしょう。

検討した結果、時効の成立が難しい場合は、別の方法で債務整理を検討しましょう。

適切な対処方法は、各人の借金状況によって異なります。弁護士・司法書士に相談のうえ、あたなに合った解決方法を提案してもらうことをおすすめします。

まずは弁護士・司法書士に相談を

借金の消滅時効が成立するかどうかは、借金の状況に応じて異なります。また、この結果次第で返済金額が大きく変わるため、慎重な対応が必要です。 法律の専門家である弁護士・司法書士に相談のうえ、間違いのないように対応することをおすすめします。

弁護士選びのポイント

弁護士・司法書士に相談するときに、一つ注意することがあります。それは、借金問題に強い専門家を選ぶことです。

一般的に、弁護士・司法書士には、離婚・相続・詐欺被害・事故示談・労働問題など分野があります。

基本的には、相手の弁護士と対等にやり取りできるだけの強い交渉力が求められます。分野によって求められる法律知識も異なるため、借金問題の相談をするなら債務整理が得意で解決実績が豊富な弁護士・司法書士を選ぶ必要があります。

債務整理は、交渉による和解を行うことが多いため、弁護士・司法書士によって、返済額に大きな差が出てきます。

弁護士・司法書士に相談するメリット

借金問題の対応には、法律の専門知識が必要であることは言うまでもありませんが、
弁護士・司法書士に相談することで、以下のようなメリットもあります。

  1. 債権回収会社からの督促が直ちにストップする。
  2. 家族や会社にバレずに解決できる可能性がある。
  3. 借金問題の適切な解決方法を提案してくれる。
  4. 債権回収会社との交渉・手続きを代行してくれる。
  5. 過払い金があるかどうか無料で調査してもらえる。
  6. 直接対話できる安心感がある。
  7. ヤミ金への対応も任せられる。

一人で悩まずに、ぜひ弁護士・司法書士に相談してみることをおすすめします。

借金問題に強い弁護士・司法書士

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借金時効に関する記事はこちら

最後に、主な債権回収会社消費者金融・カード会社に関わる借金時効に関する記事をご紹介します。

あなたが督促を受けている会社があれば、ぜひ参考にしてみてください。