借金滞納

日本学生支援機構(奨学金)と消滅時効の援用|奨学金の督促状が届いたら確認すべきこと

借金の消滅時効については、こちらをお読みください。

ここでは、借金の中でも特に「奨学金の消滅時効」についてご紹介していきます。

この記事のポイント
  • 奨学金にも時効がある
    奨学金も借金の一つであるため、時効があります。
  • 奨学金は時効期間が10年
    一般的な借金の時効は5年です。しかし、奨学金の場合は、10年と期間が長いため、注意が必要です。
  • 取り立て専門企業が督促を請負う
    「債権回収会社」という国が許可した取り立て専門企業が奨学金の取り立てを請け負うことも多いです。無視してやり過ごすことは難しく、最悪の場合、裁判になります。きちんと対応しましょう。
  • 安易に連絡しない
    借金を認めるやり取りをすると、時効期間がリセットされます。つまり、「してはいけない対応」があります。不安がある場合は、必ず弁護士や司法書士に相談しましょう。
  • 時効が成立しない場合は「債務整理」を検討
    時効が成立せず、どうしても返済ができない場合には、国が制定した借金の救済措置「債務整理」を利用することで安全かつ確実に借金問題を解決できる可能性があります。

奨学金にも時効がある

日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金にも消滅時効が適用されます。

奨学金も借金の一つです。そのため、通常の借金と同じように一定期間返済しない場合、時効が成立します。

借金の時効期間は、貸主が商売人かどうかで変わります。

貸主/借主が商人時効期間は5年
(商法522条)
貸主/借主が商人以外時効期間は10年
(民法167条)

日本学生支援機構(奨学金)は営利を目的とした株式会社ではないため、奨学金の時効期間は10年です。

カード会社など商売人から借りた借金の時効期間5年よりも長くなるため、注意しましょう。

時効の中断

一般的には、時効が成立する前に、時効を中断させようとあらゆる手段がとられます。

この時効を中断させてしまう行為は「中断事由」と呼ばれます。

中断の事由に該当して、時効が中断してしまうと、それまでの時効期間がリセットされ、そこから再び10年を要することになります。

後悔しないために、「してはいけない行為」を事前に確認しておくことをおすすめします。

時効の起算点

奨学金の時効期間の計算は少し複雑になります。

奨学金は営利を目的とした貸付けではないので、返済を滞納した場合に利用者が一括請求されてしまう期限の利益喪失の特約がない場合が多いです。

そのような場合、消滅時効の起算点がいつになるのかが問題となります。もし、期限の利益喪失の特約がなければ、奨学金の時効は各回の分割弁済金の返済期日ごとに個別に進行すると考えられます。

この点、一般的な貸金業者の借金の消滅時効が一律、最後の返済から進行するのと異なるので注意が必要です。

日本学生支援機構は延滞金を請求する場合、すでに時効期間が経過した分も含めて請求してきます。

その場合、延滞金の全部が時効にかかっていなくても、すでに時効期間が経過している一部分については、消滅時効の援用をすることで支払義務がなくすことができます。

債権回収会社から請求が来る

日本学生支援機構は、滞納金の回収に力を入れているため、滞納金の取り立てを専門とする債権回収会社(サービサー)に委託することがあります。

債権回収会社に委託する場合、すでに時効期間が経過している場合も含まれます。

債権回収会社から請求が来た場合でも「消滅時効の援用」が適用できる場合があるので、返済期日から10年以上経過している可能性がある場合、債権回収会社に安易に連絡しないようにしてください。

債務を承認させられて、時効が中断してしまうおそれがあります。

裁判上の請求があった場合

日本学生支援機構は、奨学金を9ヶ月以上滞納している利用者には一括返還を求めたうえで、督促に応じなかった場合には、裁判所に支払督促を申し立ててきます。

この支払督促に対して異議を申し立てないと、給料や預金口座が強制執行されるおそれがあります。

もし、10年の時効期間がいまだ経過していないのであれば、裁判上で分割払いの和解をするか、支払いが困難であれば、弁護士や司法書士に自己破産や個人再生をお願いすることも選択肢となります。

また、すでに10年の時効期間が経過している場合は、裁判上で消滅時効の援用をすることができます。

この時効に関する手続きは、法的知識が必要な手続きであり、闇雲に対応すると危険なため、ご自身で対応するのに少しでも不安がある場合は、弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

日本国際教育支援協会による保証制度

平成16年度以降の奨学生については、日本国際教育支援協会が保証してくれる制度があり、これを機関保証制度といいます。

機関保証制度を利用した場合に延滞すると、保証機関が日本学生支援機構に代位弁済をおこないます。これにより保証機関が求償権を取得するので、奨学生にその分の返済を請求してきます。

ただし、日本国際教育支援協会には、代位弁済後においても返済期限の猶予及び返済の免除制度があるので、返済が困難である場合は、返済の猶予や免除を相談することができます。

なお、代位弁済から10年が経過している場合は、時効の中断事由がない限り消滅時効の援用が可能です。

両親や親族による保証

日本学生支援機構を利用する際には、保証機関に保証してもらうか、もしくは両親や親族に保証人になってもらう必要があります。

消滅時効と保証の関係でいえば、すでに時効期間が経過している場合は、主債務者である利用者だけでなく、保証人であっても消滅時効の援用ができるとされています。

なお、日本学生支援機構の場合、連帯保証だけではなく通常保証も利用されています。連帯保証では、すべての連帯保証人が全額を返済する義務を負います。

これに対して、通常保証では、保証人はその頭数で割った金額を返済すればよいとされており、これを分別の利益といいます。

にもかかわらず、日本学生支援機構から通常保証人に対して、延滞金が全額請求されることがあります。

2018年にもニュースに取り上げられ、大きな反響がありました。

そういった場合、もし、消滅時効が援用できなくても、保証人が複数いるのであれば、通常保証人は分別の利益を主張して、保証人の頭数で割った金額を支払えればよいことになります。

このように法的知識がないことを狙った取り立てもされるため、不安な場合は弁護士や司法書士に相談しましょう。支払金額が何倍も違うことがあります。

日本学生支援機構と信用情報

日本学生支援機構が、平成20年11月に全国銀行個人信用情報センター(KSC)へ加盟したことにより、平成21年度以降の奨学生は個人信用情報の取扱いに関する同意書の提出が必須となりました。

その結果、奨学金の延滞が3ヶ月以上になると、信用情報機関に事故情報として掲載されてしまいます。これが一般的に「ブラックリストに載る」と言われるものです。

一度ブラックになると、延滞が続いている限りは信用情報機関に事故情報が載り続けます。

また、全銀協の信用情報は日本信用情報機構(JICC)シー・アイ・シー(CIC)も共有しているので、奨学金を滞納すると、銀行から住宅ローンなどの融資を受けることができなくなるだけでなく、他社を含めた融資や現在利用中のクレジットカードなどの利用もできなくなる可能性があります。また、2020年には、多重債務を防ぐ目的で全国の銀行におけるブラックリストの共有が強化される予定です。

なお、全銀協で一度、延滞による事故情報が掲載されてしまうと、延滞金を完済してから5年間は事故情報が掲載されます。

その結果、消滅時効の援用ができたとしても、日本学生支援機構が完済と扱えば、時効援用後も5年間は事故情報が消えないということになります。

消滅時効の援用を検討する場合

日本学生支援機構などの奨学金は、時効の起算点や保証人の問題も絡んでくるので、通常の借金の消滅時効よりも判断が難しいことがあります。

また、回収業務も債権回収会社や回収部門の専門スタッフがおこなっているので、個人で消滅時効の援用をしようとしても、あなたの知らない知識を使ってあなたに不利な状況に追い詰めていき、「時効の中断」を主張してくる可能性があります。

そのため、奨学金の消滅時効を援用する場合は、にわか仕込みの知識をもとに自分で対処するのではなく、弁護士や司法書士等の専門家にお願いした方が安全です。

時効の援用が難しいときは「債務整理」

最後の返済から5年が経過していないことが明らかな場合は、消滅時効の援用はできないため支払いの義務があります。

そういった場合は、弁護士や司法書士に相談して「債務整理」を検討する必要があります。

債務整理とは、「弁護士や司法書士に依頼することによって、借金の元本の減額や将来利息の免除などができる、国が認めた法的手続き」です。

弁護士や司法書士が行う法的手続きをいうとハードルが高く、「自分には関係ない…」と思ってしまう方もいるかもしれません。しかし、債務整理は、基本的にどなたでも利用できる国の救済措置です。毎年200万人以上(※推定)が債務整理で借金問題を解決しているとも言われています。

この債務整理には、任意整理・自己破産・個人再生・特定調停の4つがあります。

4つの債務整理の概要
任意整理 裁判所を通さず、弁護士や司法書士が貸金業者と交渉することで、将来利息のカット(場合によっては元本の減額)によって月の返済額を抑える。無理なく返済を続けたい方におすすめ。リスクやデメリットが少なく、もっとも利用者が多い。
個人再生 裁判所を通して、借金を原則5分の1に減額して、し、3~5年で完済する手続き。所有する家を残すことができるのも特徴。他の借金返済で住宅ローンの返済が圧迫されてしまっている方におすすめ。再生計画と継続した収入が必要。
自己破産 裁判所を通して、借金をゼロにする手続き。借り入れの総額が大きく、毎月の返済で生活すら圧迫されている方・人生の再スタートを切りたい方におすすめ。借金はなくなるが、家や車などの財産は失う。
特定調停 裁判所を通して、調停委員が貸金業者と交渉することで、元本の減額や利息のカットによって、借金を3~5年で完済する手続き。低額の予算で借金を何とかしたい方におすすめ。手続きが複雑で成功率が低い。

弁護士や司法書士と相談してあなたに合った手続きを行いましょう。

債務整理とは、あなたの借金を整理して無理のない返済額にする方法です。

借金返済を楽にして、生活を立て直すことができます。苦しい借金生活を抜け出すために、ぜひ弁護士や司法書士にお気軽に相談してみてください。

まずは弁護士・司法書士に相談

借金の取り立てに悩んでいる人のなかには、誰の力も借りずに自分で解決したいと思っている人もいます。

しかし、債権回収業者が連絡してくる時点で借金の返済が難しい状況です。

この状況で何をすれば、自分で解決できるのでしょうか。残念ながら、自力での解決は容易ではありません。

もしできたとしても、そこまでの道のりは険しいものになるでしょう。

できるだけ早く、苦しみのない生活を取り戻すためには、自分で解決しようとしないで弁護士や司法書士に相談することです。

債権回収業者への対応はもちろんのこと、自己破産すべきなのか、ほかの債務整理の手段を選ぶのがよいのかといったことも、専門家である弁護士や司法書士なら的確に判断しアドバイスしてくれます。

また、相談は無料でできます。また契約して弁護士・司法書士費用がかかることになっても分割払いができます。

まずは、無料相談を利用してみましょう。

奨学金の時効に関するお問い合わせはこちら

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