個人再生

個人再生をすると車はどうなるのか?車の引き上げを防ぐ5つの方法

自動車ローンの有無によって、車が引き上げられるかどうかが決まります。

自動車ローンを完済している場合は、車を引き上げられることはありませんが、ローンを返済中の場合は、引き上げられてしまいます。

しかし、車を守る方法もあります。

この記事では、「個人再生をすると車はどうなるのか」「車を守るにはどうすればいいのか」について、詳しくご紹介していきます。

この記事のポイント

自動車ローンを返済中でも車を守る5つの方法

次の5つを検討しましょう。

  1. 車のローンの残りを一括返済
  2. 親族にローンを一括返済してもらう
  3. 車の名義変更をする
  4. 債権者と交渉をする
  5. 裁判所に申し立てをする
  6. これらの手続きには、法律の知識が必要であるため、一般の方が対応するには現実的ではないでしょう。

    「どうしても車を残して借金を解決したい」という方は、すぐに弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

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自動車ローンが残っていると車を残せない

個人再生は、裁判所に申し立てをして、借金を大幅に減額したうえで、3〜5年で返済していく手続きです。

自己破産とは異なり、すべての財産を手放すわけではありません。手元に残す財産をより柔軟に決めることができます。

特に、持ち家を残せることが最大のメリットですが、車はどうなるのでしょうか。

自動車ローンを完済している場合

個人再生では、一定の範囲内では、手元に残す財産を柔軟に選ぶことができます。

自動車ローンを完済している場合、車の所有権は「あなた本人」になっているはず。つまり、あなたの財産とみなされます。

そのため、個人再生をしてもあなたの判断で車を手元に残すことができます。

自動車ローンを返済中の場合

自動車ローンが残っている場合、車は回収されてしまいます。

車の購入時に、一括で購入した場合は、車の所有権は、その場で「購入者本人」になります。

しかし、自動車ローンで購入する場合、所有権は「ローン会社や信販会社」となり、ローンを完済するまでは、あなたのものではありません。これを「所有権留保」といいます。

そのため、ローンを返済できなくなると、所有者である「ローン会社・信販会社」に回収されてしまいます。

車がローンの支払いの担保になっており、ローン会社は回収した車を売却して、その売却益をローンの返済に充てます。

ローンを完済していても注意が必要|清算価値保障の原則

ローンを完済していれば、車を手放す必要はありません。しかし、車の査定金額が高い場合は、個人再生後の返済額も高くなる可能性があります。

実は、個人再生では、手続き後の返済額を決める際に「清算価値保障の原則」というルールを守る必要があります。

清算価値とは「保有している財産を全て現金に換えたときの金額」です。

清算価値保障の原則は、借金の金額に応じて法律で定められた「最低弁済額」と「清算価値」を比べて、より高い方の金額を返済しなければならないという原則です。

そのため、手元に残す財産が多いほど、返済額も大きくなります。

自動車ローンを完済していても、非常に高価な車を所有している場合には、その分、返済しなければならない金額が増えてしまいます。

個人再生後の借金額や収入の状況などのバランスを考えながら、車を残すべきか検討する方がいいでしょう。

個人再生で車を守る5つの方法

自動車ローンが残っていると、所有権がないため、基本的には車を手放さなければなりません。しかし、車を守る方法もあります。

(1)自動車ローンの残りを一括返済する

個人再生を検討している場合、お金に苦しんでいるため、現実的な方法ではないでしょう。しかし、考えられる方法の一つです。

これまでご紹介したように、自動車ローンを完済すると、所有権が買主本人になるため、車を強制的に引き上げられることはなくなります。

ただし、個人再生をするには、すべての債権者を平等に扱わなければならず、ある特定の債権者にだけ返済する「偏頗弁済(へんぱべんさい)」は認められません。

偏頗弁済をすると、その額が財産に計上されて清算価値が大きくなります。こうなると、手続後の返済額が増えることがあります。(清算価値保障の原則)

また、偏頗弁済の程度によっては個人再生の申立てが棄却されることもあります。

(2)親族などに自動車ローンの残りを一括返済してもらう

親族などが代わりに自動車ローンの残額を支払うと、元の債権者の債権は消滅し、代わりに親族などが債務者に対する求償権を取得することになります。

求償権とは、立て替えて払ったお金を請求する権利です。

つまり、債権者をローン会社から親族などに変えることで、強制的に車が没収されてしまうことは避けられるということです。

この場合、債務者本人の財産状況に変化はないので、債権者平等には反しません。

ただし、親族も身内の人とはいえ、他の債権者と平等に扱わなければならないため、個人再生をすると、求償権(立て替えたお金を回収する権利)も減額されてしまいます。

そのため、親族に支払いをお願いする際は、この点もあわせて説明のうえ、納得してもらう必要があります。

(3)車の名義を変更する

個人再生で対象になる財産は、債務者名義のものです。

したがって、車の名義を債務者以外に変更すれば、車を残すことができます。

しかし、所有権留保がついている場合、所有者であるローン会社に無断で名義変更をすることはできません。

また、個人再生の直前に名義変更をすると、清算価値を少なくするための「財産隠し」とみられる危険があります。

悪質な財産隠しの場合、個人再生そのものが許されないこともあるのため、事前に弁護士や司法書士に相談の上、慎重に進めるべきでしょう。

(4)車の所有者である債権者と交渉する

自動車ローンの債権者と交渉をして、車を引き上げない代わりに債務の支払いをするという合意を結ぶことがあります。これを「別除権協定」といいます。

これは自動車ローンだけ全額支払いをするというもので、債権者平等に反するため、常に認められるわけではありません。
(自動車ローンの会社だけがきっちりとお金を返してもらえて、他の債権者はお金を回収し損ねて損をしてしまう)

生活をする上で、やむを得ない場合のみ、このような措置が認められます。

たとえば、個人タクシーの運転手をしている方がローンでタクシー用の車を購入したときのように、別除権を行使されると(車を引き上げられると)事業が続けられず、収入がなくなり返済を受けられなくなるため他の債権者にとっても不利益となります。

このような限られた場合のみ、裁判所の許可を得て協定の内容を実行することができます。

ちなみに、同じような理由で特例が認められるものとして「住宅ローン特則」があります。(後述します。)

(5)裁判所に申し立てをする

債権者との交渉がうまくいかない場合、裁判所に担保権消滅許可の申立てをすることが考えられます。

申し立てが認められると、裁判所の権限で担保権が抹消されるため、車が引き上げられることはありません。車を手元に残したまま手続きを進めることができます。

しかし、この制度も先ほどと同様に、タクシー運転手の例のように担保が付けられた財産が事業の継続に不可欠であることだけでなく、その財産の価値に相当するお金を裁判所に納付する必要があります。

ただ、別除権協定は、債権者が同意してくれれば分割での返済も可能ですが、担保権消滅許可の申立の場合は、まとまったお金を用意する必要があるため、資金的に余裕がないと、この方法は難しいと言えます。

車を残した場合、車の扱いはどうなるのか

これらの方法で車を残すことができた場合、個人再生の手続きでは、車はどのように扱われるのでしょうか。

重要なポイントは、「清算価値」です。

つまり、車にどのくらいの資産価値があるかによって、個人再生後の返済金額が変わってきます。

基本的に査定額(※)が清算価値の算定の対象になります。この金額が高額になると、返済額が増える可能性があります。

ただし、車があまりに古く価値が低い場合は、財産ととみなさないことになっています。

各地の裁判所によって異なりますが、おおむね査定額が20万円以下の場合、資産とみなさないという基準になっています。

(※)査定額は、下取りをする際の無料査定のような簡易のものではなく、資産価値を証明できる正式な査定書が必要です。「一般財産法人 日本自動車査定協会」が査定を行っており、全国各地に支所があるので依頼することをおすすめします。

個人再生なら住宅ローン特則で持ち家も残せる

個人再生では、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用すると、自動車ローンと同じように、住宅ローンがある持ち家も残すことができます。

住宅ローンを再生手続きの対象から外し、今までどおり又は返済期間の延長などスケジュールを組みなおした上で返済を行い、住宅ローン以外の借金を再生手続きによって圧縮するというものです。

住宅ローン特則を利用すると、次のような効果があります。

  • すでに住宅ローンを滞納している場合、滞納した分を再生計画に含めて3年間で分割返済できる
  • 住宅ローンを長期間滞納した場合、抵当権に基づいて住宅の競売手続きが始まっていても中止することができる
  • 住宅ローンの返済期間を「最大10年、ただし70歳までに完済する」という条件に延長することができる

ただし、住宅ローンそのものが減額されるわけではないので、注意しましょう。

住宅ローン特則を利用するための条件

住宅ローン特則を利用するためには、以下のような条件を満たす必要があります。

  • 住宅の購入、改良(リフォーム)などのローンであること
  • 住宅ローン以外の抵当権が付いていないこと
  • 建物の床面積の2分の1以上が居住用であること
  • 保証会社が代位弁済を行っている場合、代位弁済から6カ月を経過していないこと

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