「借金がどうしても返済できないけど、自己破産は避けたい…」
個人再生は、借金を大幅に減額して、残債を3年以内で返済する手続きです。
ただし、どのくらい借金を減額できるかは、借金の残高や財産、収入などによって変わってきます。
ここでは、個人再生が最適の手段かどうか判断する前に、まずは返済金額の決め方を理解し、どのくらい借金を減らせるのか把握することから初めてみましょう。
後で後悔しないために事前に基礎知識を身につけておくことは大切です。
目次
個人再生で借金をどのくらい減額できるのか
借金の減額幅は、基本的に借金の総額で決まります。
個人再生を利用するための要件
個人再生は、裁判所の承認を得て、借金を大幅に減額してもらい、残りの借金を3年程度で返済していく手続きです。
民事再生法という法律で規定されている企業の再建手続きを参考にして制定され、2001年4月に施行された手続きです。
個人再生の手続きをするには、次の2つの要件を満たす必要があります。
個人再生をするための要件
- 借金が5000万円以下(住宅ローンを除く)
- 将来にわたり継続的に安定した収入が見込める自営業者や会社員などの給与所得者
これらの要件を満たしたうえで、借金の一定額を3年以内で完済できるよう、再生計画案を立て、裁判所に提出します。
この再生計画案が裁判所から認可が得られ、計画どおり返済できると、残りの借金が免除されるという仕組みです。
減額対象になる借金や最終的に支払うべき金額の決定にはいくつかの基準があります。
個人再生で減額対象になる借金・ならない借金
減額対象になる借金は、消費者金融からの借入、銀行の各種ローン・クレジットカードの未払い分、知人から借りたお金などです。
一方で、減額対象にならない借金は、税金・国民健康保険料・養育費などの未払い分、不法行為による損害賠償金などがあります。
住宅ローンは、後に述べる住宅ローン特則を利用する場合は減額対象にはなりません。しかし、これを利用しない場合は、住宅を売却し、その売却益でも完済できない場合に、残った住宅ローンが減額対象になります。
最低弁済額は債務の総額に応じて決まる
個人再生の利用する人が最低限返さなくてはならない金額(最低弁済基準額)は、借金の金額に応じて、以下のように決められています。
借金総額(住宅ローンを除く) | 最低弁済基準額(目安) |
〜100万円 | 総額全部 |
100万円〜500万円 | 100万円 |
500万円〜1500万円 | 総額の5分の1 |
1500万円〜3000万円 | 300万円 |
3000万円〜5000万円 | 総額の10分の1 |
例えば、借金が600万円であれば、最低弁済基準額は借金の5分の1で120万円です。つまり、480万円が減額されることになります。
この他に減額対象にならない税金の滞納分などがあれば、この120万円に加えて、その滞納分を支払わなければなりません。ただし、「これらを一度に払うと再生計画案が実行できなくなる」という場合は、債権者と交渉して分割払いにすることもあります。
個人再生では財産があると返済額は増えるのか
借金の減額幅は、借金の総額だけでなく、「最低弁済基準額」と「財産の総額」を比較することで決まる場合もあります。
最低弁済基準額と財産の総額を比べて多いほうの金額を支払う
保有財産を手元に残せるのも個人再生のメリットの一つです。
しかし、すべての財産を無条件に残せるわけではありません。
先ほどご紹介した最低弁済基準額よりも財産をすべて処分して得られる金額(清算価値※)のほうが多ければ、その金額を支払う必要があります。そのため、保有資産が多い人は、借金の減額幅が小さくなることがあります。
例えば、借金が300万円の場合、最低弁済基準額は100万円ですが、車や貴金属など財産の清算価値が150万円相当であれば、最低限150万円を返済する必要があります。
個人再生における「清算価値保障原則」
清算価値保障とは、簡単にいうと「現在保有している財産価値の総額は最低限支払わなければならない」という原則です。
個人再生は、自己破産と違って、「財産があっても処分しなくてよい」という手続きですが、その代わりに、この清算価値保障というルールを守る必要があります。
このため、清算価値が高額になる場合、その分、個人再生後の借金の返済額も高額になってしまいます。
裁判所に提出する再生計画案は、この原則を満たしていなければ認められません。
財産総額が多い人の返済額はどうなるのか
ご紹介してきたように、個人再生でどのくらい借金を減額できるかは、「借金の総額」「最低弁済基準額」「財産の清算価値」から、おおよその金額を把握することができます。
例えば、財産の清算価値が総額200万円の場合、減額できる借金は次のようになります。
減額のモデルケース|借金500万円の場合
最低弁済基準額100万円 < 財産の清算価値200万円
この場合、200万円の支払いが必要になるため、
減額できる金額 = 500 - 200 = 300万円
減額のモデルケース|借金1000万円の場合
最低弁済基準額200万円 < 財産の清算価値200万円
この場合、200万円の支払いが必要になるため、
減額できる金額 = 1000 - 200 = 800万円
借金の減額できる金額を比べると、借金が多いほど個人再生のメリットは大きく、より多くの財産が残せると言えます。
ただし、財産が多くて返済額があまり減らない場合は、個人再生を選ぶメリットは小さくなるということです。
その場合、他の債務整理の方法である「任意整理」「自己破産」を選ぶことになります。
任意整理は、金融機関などと直接、返済条件を交渉します。財産を残したいときは、交渉次第で個人再生よりも柔軟な返済計画を立てることができます。
また、借金をゼロにすることを最優先にしたい場合は、自己破産が有効な手続きです。
個人再生では給与が多いは返済額も高くなるのか
返済額を決める時には、もちろん給与も考慮されます。
「最低弁済基準額」「財産の清算価値」「可処分所得基準」を比べて、最も多い金額を返済額とすることになります。
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」がある
個人再生には、自営業や歩合制の仕事で収入を得ている人を対象とした「小規模個人再生」と、給与など定期的な収入を得る見込みがあり、その額の変動の幅が小さいと見込まれる会社員などを対象とした「給与所得者等再生」という2つの手続きがあります。
小規模個人再生の返済額は、「最低弁済基準額」と「財産の清算価値」のどちらか多い方になります。
給与所得者等再生の返済額は、「最低弁済基準額」「財産の清算価値」「可処分所得基準」の3つのうち最も多いものになります。
給与所得者等再生の「可処分所得基準」とは
個人再生手続きにおける「可処分所得」は、収入から税金と社会保険料、それから本人と扶養されている家族の最低限度の生活費を差し引いた残りのことです。
そして、「可処分所得基準」は、可処分所得の2年分として計算されます。
例えば年収240万円、1年間の税金・社会保険料、最低限の生活費が96万円の独身の人では、可処分所得と可処分所得基準は次のように計算されます。
可処分所得と可処分所得基準の計算
可処分所得 = 240万円-96万円 = 144万円
可処分所得基準 = 144万円×2年分 = 288万円
借金が400万円の場合、最低弁済額は100万円なので、給与所得者等再生の手続きをすると、288万円が最低限返済が必要な金額となります。
ただし、最低限必要な生活費は政令で定められた計算方法があり、地域や家族構成によって異なります。同じ年収でも、扶養家族が多ければ可処分所得は少なくなるため、注意しましょう。
「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」のどちらを選ぶべきか
ご紹介したように、どちらを利用するかで返済額を決める基準が違っています。
「会社員なら給与所得者等再生を必ず利用しなければいけない」というわけではありません。
可処分所得基準が、借金に対する最低弁済基準額よりも多くなる場合は、小規模個人再生を選ぶことができます。
個人再生なら自宅を残すことはできるのか
個人再生の住宅ローン特則(住宅資金特別条項/住宅資金貸付債権に関する特則)
個人再生で残すことのできる住宅の4つの条件
個人再生では、財産を手元に残すことができます。そのため、個人再生をしながら家に住み続けることもできます。
同じ債務整理でも「自己破産」では、家は手放差なくてななりませんが、個人再生では住宅ローン特則を利用することで、住宅ローンはそのまま返済できるようにし、家を守ることができます。
ただし、住宅ローンの残高よりも住宅の価格が高い場合(住宅価値が値上がりした場合)は、基本的に家を手放さなければなりません。それでも残したいという場合は、「任意整理」という債務整理手続きを選択することになります。
住宅ローン特則は、家を残せるという大きなメリットがありますが、利用するためにはさまざまな条件があります。
まずは、残すことができる住宅の条件は、次の4つです。
個人再生で残すことのできる住宅の条件
- 本人が所有する住宅であること
- 本人が生活の拠点として使っていること
※実際に居住している必要があります。仕事場として使っている場合でも、床面積の二分の一以上がもっぱら居住用でなければ、特則は使えません。 - 住宅ローンの抵当権が設定されていること
※抵当権が付いているかどうかは、建物の登記簿に記載されています。また、住宅ローンの契約書や金融機関でも確認できます。 - 住宅ローン以外の担保権が付いていないこと
住宅ローン特則で変更できるのは返済期間のみ
住宅ローン特則では、住宅ローンの元本、利息、延滞による損害賠償金は減額されません。
変更できるのは返済期間のみで最長10年間延長することができます。
ただし、完済時の年齢が70歳を超えないことが条件です。その範囲内で、再生期間中は元本の返済を猶予するなどの変更が可能です。
住宅ローン特則は複雑で細かな条件が多いため、ケースごとに専門的な判断が必要となります。
特則が適用できる時期についても、すでに住宅ローンを滞納している場合は要注意です。
競売が始まっていたり、保証会社の代位弁済が行われて6か月経過していると、この特則は利用できません。そのため、住宅ローン特則の利用を検討している場合は、早めに弁護士や司法書士の無料相談を利用することをおすすめします。
個人再生後の返済額と返済期間はどのように決まるのか
個人再生の手続きは複雑です。
個人再生の返済期間は原則3年、最大5年まで延長可能
個人再生では、大幅に借金を減額できる代わりに、3年で分割返済する再生計画を裁判所に提出し、認可を受けなければなりません。
返済期間は特別な事情がある場合、裁判所が認めれば最長5年まで延長することができます。
また、返済の間隔は3か月に1回以上と決められています。
再生計画案が認められないこともある
再生計画案には、毎月やボーナス時など、支払う間隔と金額、回数、支払い方法を記載します。 再生計画案は、必要な要件を満たしていない場合や、実行の可能性が低い返済計画では認可されません。
例えば、100万円を36か月で毎月返済する場合、1回の返済額は約2万8000円です。住宅ローン特則を使えば、さらに住宅ローンの返済分が加わります。この合計が収入から無理なく返済できる金額であれば、認可の可能性は高くなります。
個人再生の手続きは複雑であるため、あらゆる観点から慎重に検討しなければなりません。
もし再生期間中に返済が困難になったときは、再生計画が取り消され、借金を全額返済する必要が出てくることもあります。
そうならないよう、確実に手続きを進めるためにも、少しでも不安がある場合は、専門家である弁護士や司法書士にアドバイスを受けて、最適な方法で借金を解決しましょう。
少しでも不安がある方はまず相談しましょう
債務整理には、個人再生も含めて様々な手続きがあります。
まずは「そもそも個人再生が最適な方法なのか?」「個人再生の利用条件を満たしているのか?」などよく検討する必要があります。
個人再生を選択する前に、抱えている借金額や自分の状況を照らし合わせて、この手続きが最適なのかもう一度考えてみる必要があります。
これらの判断には、法律の知識も必要になるため、一人で考えるのは難しいでしょう。
そこで、まず弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。借金問題に強い弁護士や司法書士であれば、個人再生の選択を適正に判断することができます。
弁護士や司法書士というと、多額の費用がかかるイメージをお持ちかもしれません。また、ハードルが高く、「自分には関係ない…」と思ってしまう方もいるかもしれません。
しかし、最近は債務整理を多く扱う弁護士・司法書士事務所なら、分割払いに応じてくれるなど、お金に困っている人に寄り添ったサービスを用意していることも多く、利用しやすくなっています。
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