引き直し計算は、「現行の利息制限法に則って、正しく利息の計算をやり直すこと」です。
利息を払い過ぎていることが発覚するケースが後をたちません。過払い金の有無を確認することもできます。
特に以下の方はすぐに確認しましょう。
- 2007年以前に借金をしていた方
- グレーゾーン金利で借入していた方
借金問題の解決には欠かせない手続きです。
目次
引き直し計算/1.5〜2倍も違う金利
引き直し計算とは「高い金利で返済した借金を、正しい金利で返済した場合に計算し直すこと」です。
貸金業者の中には、利息制限法で定められた正しい金利ではなく、出資法による高い金利で貸付を行っている会社がありました。
引き直し計算をすることで、正しい金利と高い金利の差額である過払い金を算出することができます。
正しい金利と高い金利は次のように1.5~2倍程度も違いがあります。
借入額 | 出資法の上限金利 | 利息制限法の上限金利 |
10万未満 | 29.2% | 20% |
10万円~100万円未満 | 29.2% | 18% |
100万円以上 | 29.2% | 15% |
引き直し計算を必ずすべき人とは?
引き直し計算は、正しい金利で返済した場合に計算し直す方法であるため、そもそも正しい金利でお金を借りていた場合は計算する必要はなく、過払い金は発生しません。
しかし、以下のような方は、過払金が発生している可能性が高いため、引き直し計算は必須と言えます。
過払金が発生している方
- 2007年以前に借金をしていた方
- グレーゾーン金利(※)で借入していた方
また、以下のような方は、過払い金が高額になる可能性があります。
- 借入期間が長い
- 利用限度額が大きい
- 多重債務を抱えている
1社の貸金業者の取引期間において、分断なく、継続的に取引がある方は、過払い金の額は大きくなります。また、借金の額に比例して利息も増えるため、借金の額が大きいほど過払い金の額は大きくなります。さらに、複数の貸金業者で過払い金が発生しいる場合は、すべてまとめると高額になる可能性があります。
引き直し計算の方法とは?
引き直し計算で必要なことは2つです。
- STEP1.取引履歴を入手
- STEP2.引き直し計算で正確な借金額を算出
STEP1.取引履歴を入手する方法
取引履歴とは「借入した時の金利・金額・日付や返済した時の金額・日付などが記載されている書類」です。
窓口
貸金業者の店頭窓口、電話や郵送、FAX、インターネットなどで取り寄せることができます。
入手にかかる時間
窓口に行けば最短で2時間ほど、電話や郵送、FAX、インターネットであれば2週間~2ヵ月程度で入手できます。
手数料
取引履歴を請求すると1,000円ほどの手数料がかかる貸金業者もあります。事前に手数料を確認することをおすすめします。
引き直し計算が理由で倒産した貸金業者もたくさんあります。そのため貸金業者に連絡すると「取り合ってもらえないのではないか…?」と心配になる方もいると思いますが、過去に最高裁判所で「取引履歴の開示義務」の判決がでているので、断られることはありません。ご安心ください。
STEP2.引き直し計算で正確な借金額を算出
インターネット上に公開された無料のソフトウェアも用意されています。また、エクセルでも計算することができます。
利息の引き直し計算をするときはまず、返済を開始した月から現行の利息制限法上の法定利率に基づきひと月分ずつ本来の利息を算出します。そして、旧来の利率で計算した利息から算出した利息を引いて、過払いとなった利息を割り出していきます。
(計算例)
29%のグレーゾーン金利で10万円借りた場合、1年後には2.9万円が付き、借金総額は12.9万円です。利息制限法によれば10万円以上100万円未満の場合は18%ですから、11.8万円を支払えば良いはずです。
つまり、(12.9万円-11.8万円=)1.1万円分多く支払っていますので、利息制限法に従った適法な金利であったら借金額はどうなるか、を計算し直すことが必要になります。
引き直し計算は自分でできる?
自力で行うことも可能ではありますが、多大な手間と労力がかかることを考えると、専門家に依頼したほうがよいでしょう。
自分で引き直し計算をする場合は、いくつか注意点があります。
取引履歴を取り寄せるのに時間がかかる
貸金業者によっては、司法書士や弁護士からの依頼を優先して、個人からの依頼を後回しにすることがあり、取引履歴が手に入るまでに時間がかかる場合があります。
取引履歴の使用目的の回答には要注意
貸金業者に取引履歴の発行を依頼すると、使用目的を聞かれることがありますが「過払い金請求をするため」と答えないようにしましょう。
「過払い金請求」によって倒産した貸金業者はたくさんあります。貸金業者にとっては、死活問題です。
そのため、最悪の場合、貸金業者に「利息を過払い金とわかったうえで返済を続けていた」と主張されて、1円も過払い金が取り返せなくなる可能性も出てきます。
使用目的を聞かれた場合は 「すべての取引を確認したい」 などと答えると良いでしょう。
計算間違いは厳禁
引き直し計算を間違えたまま、少ない金額で過払い金請求をしても、貸金業から誤りを指摘されることはありません。
過払い金が少なければ貸金業者が支払うお金も少なくなるためです。
逆に貸金業者に本来の過払い金より多く請求すると、過払い金が間違っていることで貸金業者に過払い金請求を断られる可能性があります。そのため、過払い金の引き直し計算は正確に行う必要があります。
過払い金の引き直し計算は、あなたが過払い金請求で損をするか得をするかが決まる大切なポイントであるため、計算する際は間違えないでください。
無料の計算ソフトはあくまで目安
インターネット上には、借入金額と返済年数を入力するだけで過払い金が簡単にわかるページが多く公開されています。
しかし、貸金業者によって利率が変わったり、利息を改めた日が違ったりするので、借入金額と返済年数だけでは正確な過払い金はわかりません。
無料の過払い金計算サイトの数字はあくまで目安です。参考程度にとどめて、自分で計算するか、司法書士や弁護士に依頼しましょう。
専門家に相談すべき人とは?
引き直し計算は、自分でもできますが、以下のような状況の方は、専門家に相談した方が安心です。
借入と完済を繰り返している方
同じ貸金業者から借入と完済を繰り返していると、引き直し計算がむずかしくなります。
また、過払金が発生した場合、時効を考慮する必要があります。過払い金請求の時効は、最後取引日から10年です。
しかし、取引が同じ契約番号でも、1度目の借入を完済してから、次の借入までに空白期間がある場合、借入と完済の取引をまとめて「一連」として扱うのか、別々の取引として「分断」して扱うのか、によって時効期間のカウント方法が変わってきます。
借入と完済を繰り返している場合の時効の判断は、裁判に発展することもあり、非常に難しいものです。そのため同じ貸金業者から借入と完済を繰り返している方は、自分で判断しないで司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
貸金業者に取引履歴が処分されている可能性がある方
実は、一定期間を過ぎた取引履歴を処分している貸金業者があります。
取引履歴は引き直し計算するために必要ですが、処分されている場合は、「推定計算」で引き直し計算します。
推定計算とは「取引履歴が貸金業者によって処分されて履歴が不完全である場合、履歴がない取引を通帳の引き落とし履歴や、公開されている部分の取引履歴から推測して過払い金を計算する方法」です。
これは。非常にむずかしいため、取引履歴が処分されている可能性がある貸金業者から借入をしていた方は、自分で引き直し計算をするのではなく、司法書士や弁護士に相談するのが得策です。
- JCB
- CFJ
- レイク
- ニコス
- セゾン
- エポス
- オリコ
- ジャックス
- 新生フィナンシャル
これ以外にも、取引履歴が処分されている可能性がある貸金業者があるため、事前に確認しましょう。
借金返済に遅延や延滞がある方
支払いの遅延や延滞がある場合は、利息制限法の上限金利の最大1.46倍になる「遅延損害金利率」を考慮する必要があります。
消費者金融などの貸金業者でお金を借りると、返済期日が設けられます。この期日が到来するまでは返済義務がないことを「期限の利益」といいます。
しかし、遅延すると、「期限の利益の喪失」となり、遅延損害金利率の適用が認められているため、遅延損害金利率を適用して、引き直し計算をすべきだと主張されることがあるのです。
この主張は、弁護士や司法書士に依頼すれることで退けられる可能性があります。交渉次第になるため、借金問題に強い事務所を選ぶ必要があります。
引き直し計算を自分でやる場合と専門家に依頼する場合のメリット・デメリット
過払い金の引き直し計算は、自分でおこなうこともできますが専門家に依頼することも可能です。
そこで、それぞれのメリットとデメリットを確認しておきましょう。
メリット | デメリット | |
自分で計算 | 無料の過払い金計算ソフトを使えばお金がかからない | 引き直し計算ミスに気づくことができない(過払い金の額が少なくなる可能性あり) |
弁護士・司法書士に依頼 | 正確な過払い金額がわかるうえに、手間がかからない | 代行先によってはお金がかかり、どこにするか選ぶのが面倒 |
引き直しの計算は弁護士・司法書士に相談を
自分で引き直し計算をした場合、正しい結果なのかわかりません。また、取引履歴の取り寄せができないという方も多くいます。
正確な借金額を把握して損をしないためには、借金問題に強い弁護士や司法書士に相談して、正確かつ速やかに対応してもらう方がいいでしょう。
中には、「過払い金の計算するだけでもお金がかかるのでは…?」と、弁護士や司法書士に相談するのを迷っている方もいるかもしれません。
しかし、無料で計算してくれる事務所もあるので気軽に問い合わせてみましょう。
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