住宅ローンが返済できなくなった場合、家を売って借金を返済することになります。
このとき、次の2つの売却方法があります。
- 任意売却
- 競売
ここでは、売却方法の違い、競売のデメリット、任意売却の費用についてご紹介していきます。
任意売却と競売の違いとは
住宅ローンを返済できなくなると、借入先である銀行等の金融機関(債権者)は裁判所を通じて不動産を売り、その売却益から借金を回収します。これが「競売手続き」です。
お金の貸し手は、住宅ローンが申請された際に購入した不動産に「抵当権」を設定しています。住宅ローンが返済されなくなった時には、不動産の売却益からローン残額を回収できるように保険をかけているということです。
最近は、競売に移行するまでの期間が短くなっており、滞納を始めて4~6ヶ月程度で競売になることが多いようです。裁判所から「競売開始決定通知」が届いた時点から最短約4ヶ月で不動産は強制的に売却されてしまいます。
競売で問題になるのは、物件は相場の約60~70%程度の価格で落札されてしまうことです。このため、念願のマイホームを手放したのに、多額の残債が残ってしまうという場合が大半です。
そこで注目されているのが、不動産の専門家が債権者と債務者の間で調整を行い、不動産売買価格がローン残高を下回っても抵当権を解除できる「任意売却」という解決方法です。
競売は、裁判所を通して取引するため、強制的で融通が利かない手続きですが、任意売却は自らの判断(任意)で取引を行えるところが大きな違いです。
任意売却の一番の魅力は市場価格にほぼ近い価格で売却できるので、残債を大きく圧縮できることです。債権者にとっても任意売却のほうがより多く債務回収ができる利点があります。
競売のデメリット
競売では、市場相場の約60~70%の価格で売られてしまうため、多くの債務が残ってしまいます。ほとんどの場合、交渉の余地はありません。
マイホームを手放した後では、それ以上返済する能力もない上、残った多額の借金の一括返済を迫られ、給与などを差し押さえられる恐れもあります。
また、競売によって得た売却代金はすべて抵当権者への返済に充てられるので、引っ越し代などの出費も別途用意しなければなりません。
落札後はいわば不法占拠になるため、裁判所からの強制立ち退き執行もあり得ます。
さらに、プライバシー侵害による精神的ダメージも小さくありません。競売に掛けられると、裁判所の執行官等が自宅調査を始め、落札目当ての不動産業者からも自宅周辺を嗅ぎ回られます。新聞や住宅情報誌、インターネット、裁判所などで物件の写真を掲載している資料が公開されるため、競売になったことが近隣に知られてしまうのも大きな苦痛となります。
「近所の家が競売になったのを見たことがある。あんな思いだけは絶対にしたくないので、どうか任意売却をさせてほしい」という相談者もたくさんいます。
任意売却に掛かる費用
不動産を売却した代金から、国土交通省の定める報酬規程に基づき、媒介手数料として売却代金の3%+6万円+消費税を支払います。
この他に、滞納している管理費・修繕積立金等(マンションの場合)、設定されている抵当権の抹消費用、固定資産税・住民税等の滞納による差押え解除費用なども、売却代金からの控除が可能です。
もし売却に至らなかった場合には、媒介手数料を請求されることはありません。
なお、引っ越し代については、以前は100万円近い費用を出す債権者もありましたが、最近では住宅金融公庫が破産の場合に30万円を負担するのを除き全く捻出しなくなり、その他の金融機関・保証会社やサービサー(債権の回収業者)も厳しい対応になっています。場合によっては、引っ越し代は自己負担になることを覚悟しておくほうがいいでしょう。
競売で市場価格よりも極端に安く不動産が売却される事態を避けるため、不動産業者の仲介によって不動産の売買価格がローン残高を下回った場合でも売却の合意を得る任意売却は、売却後も無理のない返済が可能です。
このことから、「競売を回避する有効策」「ローン支払い困難者の救済手段」として注目されています。
債権者が競売の申し立てを行い、低額で処分されてしまう前に早めに手を打つことが大切なので、ローン滞納の解消が困難と判断した時点で任意売却の相談をしてみることをお勧めします。