急な収入の減少や、事故・病気などで住宅ローンが支払えなくなってしまうと、借入先の金融機関が裁判所を通して、強制的に家を売却し、ローン残額を回収する「競売手続き」が行われます。
一般的には、住宅ローンを12ヶ月ほど延滞すると強制的に家を売られ、立ち退きを要求される手続き(競売)へ進みます。
しかし、最近では競売手続きに移行するまでの猶予期間が短くなっており、住宅ローンの滞納が4~6ヶ月ほど続くと競売に移行することもあります。
さらに、競売の場合、物件の相場が約60~70%程度の価格で落札されてしまうため、不動産が売れても借金の返済に充てられるお金が少なくなってしまいます。
この記事では、住宅ローンの返済ができない人に向けて、競売を回避する方法である「任意売却」をご紹介します。
任意売却も家を売る手段ですが、競売と違い、自分たちで「いくらで売却し、残った借金をどのように支払うか」を交渉することができ、売却後の生活に大きな差が生まれます。
また「どうしても家に住み続けたい」という人に向けて、売却したあとの住宅をふたたび借りる契約(リースバック)を、条件次第で目指す方法もあります。
このように、任意売却は、交渉力次第であなたに合った借金解決の方法を取ることができます。
目次
住宅ローンの返済ができない場合はまず「任意売却」
任意売却とは
任意売却とは「購入を希望する第三者と自ら交渉することで家を売却し、売却によって得たお金でローンを返済する手続き」です。
延滞を放置し続けて強制的に家を売られてしまう「競売」の手続きと比較して、市場価格に近い(高い)値段で家を売ることができます。その分、借金の返済に充てられる金額が多いということです。
また、家を売っても返済できずに残ってしまった借金(残債)がある場合も、住宅ローンの借入先と交渉することで、月々に返済可能な金額で分割返済することができます。
「住宅ローンの支払いができない」と感じた方は、すぐ弁護士・司法書士に相談し、任意売却を検討するべきでしょう。
競売で市場価格よりも極端に安く不動産が売却される事態を避けるため、不動産業者の仲介によって不動産の売買価格がローン残高を下回った場合でも売却の合意を得る任意売却は、売却後も無理のない返済が可能です。
「競売を回避する有効策」「ローン支払い困難者の救済手段」として注目されています。
売った家を再び借りる「リースバック」
リースバックとは「投資家や不動産会社などの第三者へ住宅を売却し、その売却先から住宅を借りることで、家を手放さずに住み続けることができる手続き」です。
最近では、任意売却して、リースバックで住み続ける取引方法が注目されています。
また、リースバックをした後に、家を買い戻すこともケースもあります。出産や育児、入院などの事情によって、収入が一時的に減少してしまい、現在はローン返済に困窮していても、将来的に収入が回復する見込みがある場合などです。
さらに、同居している子供たちが自宅を買い戻すケースも多くの実績があります。今はまだ就職したばかりの子供たちが、子供の勤続年数が住宅ローンを組めるまで長くなったりして、数年後に住宅ローンを組むことができる場合などです。
他にも、たとえば住宅の価値が3000万円で、住宅ローンの返済額が2000万円のときなど、住宅の価値が上回っている場合は家賃を支払いながら生活を立て直せる可能性があります。
どうしても今の家に住み続けたい方は、リースバックを検討してみることをおすすめします。
リースバックが難しい場合も
- 住宅ローンの残債<物件の価値:リースバックを検討
- 住宅ローンの残債>物件の価値:任意売却を検討
“1”のように、住宅ローンの残債が不動産の価値より高くなっている状況(オーバーローン)では、貸し手の金融機関と合意しづらく、リースバックが成立しにくい傾向にあります。
例えば、次のような状況を考えてみます。
(例)
- 自宅の市場価値1200万円/住宅ローン残債700万円
- 自宅の市場価値1200万円/住宅ローン残債1500万円
一般的に、リースバックを行うと、自宅の買取額は市場価値の60%~70%となります。
1つ目の場合は、家の売却によって得た720万円(1200×0.6)で住宅ローンが完済できるため、リースバックが成立する可能性があります。
しかし、2つ目の場合は、家の売却によって得た720万円(1200×0.6)では、住宅ローンを返済しきれません。こうなると、お金の貸し手は、住宅ローンで貸したお金を回収できなくなるため、売却が認められず、リースバックが難しくなります。
要は、お金の貸し手は、ローンが回収できれば、交渉に応じてくれますが、ローンが回収できなくなるようであれば、損をすることになるので、交渉に応じなくなります。
住宅ローン延滞の先に待つ「競売」
住宅ローンを滞納し続けると、行きつく先は「競売」です。
競売は任意売却と違い、裁判所を経由して強制的におこなわれる手続きのため、引っ越し時期の希望など、債務者の意思はいっさい反映されません。
また、競売にかけられた自宅の売却価格は市場価格の7割前後となることが多く、任意売却よりも安く売られてしまう可能性があります。
なにより家を売却した後で残債が発生した場合、任意売却であれば交渉が可能ですが、競売では分割での返済が認められません。
そのため、一括で支払うお金がない場合は「給与・不動産」などの強制差し押さえに進むことになり、普通の生活を送ることが難しくなります。
住宅ローンの滞納を放置し続けることで、強制的に競売の手続きが取られてしまうことから、債務者は競売を回避するためにも、できるだけ早い段階から「リースバック」や「任意売却」を検討するべきでしょう。
住宅ローンを滞納し続けるとどうなるのか
住宅ローンを支払わないままでいると、延滞期間ごとに下記のような手続きが取られます。
延滞1ヶ月~2ヶ月 | 電話による督促や督促状・催告書の発送 |
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延滞3ヶ月~6ヶ月 | -期限の利益の喪失通知予告書の発送 -代位弁済通知書の発送 |
延滞8ヶ月~12ヶ月 | -競売開始決定通知書の発送 -期間入札の通知 -売却基準価格の公表 |
延滞12ヶ月~14ヶ月 | -期間入札の公示 |
延滞14ヶ月~16ヶ月 | -競売落札額の通知 -所有権移転 |
延滞16ヶ月~18ヶ月 | -立ち退き |
延滞1ヶ月~2ヶ月
まずは電話やハガキによる取り立てが行われます。
深夜や早朝に電話や恫喝をしたり、近所や玄関に張り紙を貼るといった違法な取り立てはしませんが、無視を続けると親や保証人、職場に電話をかけるなど、取り立てが厳しくなっていきます。
延滞3ヶ月~6ヶ月
期限の利益の喪失通知予告書が届きます。
「期限の利益の喪失」とは「分割での支払いをこれ以上待てない」という意味です。
この予告書を無視して滞納を続けると、「残りの住宅ローンを一括で支払ってください」という要求をされます。
月々の返済を滞納しているにもかかわらず、要求通りに一括で支払えることはほとんどありません。そのため、保証会社が住宅ローンの支払いを肩代わりします。これを「代位弁済」と言います。
代位弁済に切り替わることで、住宅ローンの残金に「遅延損害金」が上乗せされます。
遅延損害金の利率は約14%に設定されており、月々返済する住宅ローンに、遅延日数に応じて利息分が追加されます。
(例)
住宅ローン残高2000万円、月の返済額15万円(遅延している約定返済額の元金)、遅延日数10日の場合、600円弱の遅延損害金が上乗せされたうえで、一括請求されます。
150,000円(返済額)×14%(利率)÷365(日)×10(遅延日数)=575円
一括返済ができない場合、次の3つの選択をすることになります。
- 任意売却
- 競売
- 自己破産
つまり、延滞から2ヶ月以内に対処しなくては、契約通りの分割支払いができなくなってしまうということです。
延滞12ヶ月~
延滞が8〜12ヶ月に及ぶと送付される、裁判所が競売の申し立てを認めたことを意味する「競売開始決定通知書」は、任意売却の手続きができるギリギリのラインです。12ヶ月を過ぎると、家の立ち入り調査→入札期間の通知→入札→立ち退きという流れで競売が進みます。
住宅が競売にかけられた場合、市場価格よりも低い値段(6~7割程度)で売られる傾向にあります。1000万円の価値がある家なら600万円~700万円で売られる計算です。
また、住宅を売ったお金でローンを返済しきれず「残債」として返済額が残った場合、任意売却後は分割返済の交渉が可能ですが、競売後だと一括返済を求められます。
一括で返せない場合は、「給与やほかの資産の差し押さえ、競売」へと進むため、自己破産の検討をしなければ債務の問題を解決できなくなります。
住宅ローンを3ヶ月延滞した時点で、できるだけ早く(どれだけ遅くても12ヶ月以内)に「任意売却」の検討をしましょう。
住宅ローン滞納で 新規借り入れとクレジットカード作成が難しくなる
住宅ローンを3ヶ月延滞したこと、また代位弁済がおこなわれたことは、「事故情報」として個人信用情報に登録されます。
住宅ローンを債務者へ貸している銀行は「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」という個人信用情報機関に加盟しており、おなじく会員である金融機関の銀行カードローン・オートローンの作成が5年間できなくなります。
また、KSCに登録された事故情報はCRINというネットワークを介して、ほかの信用機関(CIC、JICC)に共有されます。
つまり国内の、ほぼすべてのクレジットカード会社や消費者金融会社に事故情報が共有され、5年間はクレジットカードの作成・新規借入れの事前審査に通らなくなります。
- CIC:株式会社シー・アイ・シー
- JICC:日本信用情報機構
住宅ローン以外の借金は「債務整理」で軽減を
債務整理とは、「弁護士や司法書士に依頼することによって、借金の元本の減額や将来利息の免除などができる、国が認めた法的手続き」です。
弁護士や司法書士が行う法的手続きをいうとハードルが高く、「自分には関係ない…」と思ってしまう方もいるかもしれません。しかし、債務整理は、基本的にどなたでも利用できる国の救済措置です。
毎年200万人以上(※推定)が債務整理で借金問題を解決しているとも言われています。
住宅ローンを延滞しており、さらに他の借金を抱えている(多重債務)場合は、債務整理を検討するべきです。
この債務整理には、個人再生・任意整理・自己破産・特定調停の4つがあります。
個人再生(住宅ローン特則) | 住宅ローン以外の借金を5分の1程度に圧縮・減額して、もう一度分割で住宅ローンを返済することを目指す手続き。「ほかの借金さえ減らせたら、住宅ローンの支払いができる」人にとって返済計画を立て直すことができるため、個人再生の利用を検討するべき。ただし、延滞している場合は、代位弁済から6ヶ月以内に民事再生の申し立てをしないと、個人再生の手続きができなくなる。 | 任意整理 | 裁判所を通さず、弁護士や司法書士が貸金業者と交渉することで、将来利息のカット(場合によっては元本の減額)によって月の返済額を抑える。無理なく返済を続けたい方におすすめ。ただし、任意整理の対象には住宅ローンが含まれないため、個人再生とおなじく、住宅ローン以外の債務を減らしたいときに検討。リスクやデメリットが少なく、もっとも利用者が多い。 |
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自己破産 | 裁判所を通して、住宅ローンを含めたすべての借金をゼロにする手続き。住宅ローン返済のため、家を売っても全ての借金を返しきれず、他で借りた借金も返済のメドが立たないときなど、最終手段として検討する。借り入れの総額が大きく、毎月の返済で生活すら圧迫されている方・人生の再スタートを切りたい方におすすめ。 |
特定調停 | 裁判所を通して、調停委員が貸金業者と交渉することで、元本の減額や利息のカットによって、借金を3~5年で完済する手続き。低額の予算で借金を何とかしたい方におすすめ。手続きが複雑で成功率が低い。 |
どの手続きを選ぶべきかは、借金をしている方の借金額や期間、経済状況などによって異なります。
債務整理とは、あなたの借金を整理して無理のない返済額にする方法です。
借金返済を楽にして、生活を立て直すことができます。苦しい借金生活を抜け出すために、ぜひ弁護士や司法書士にお気軽に相談してみてください。
債務整理は、その手続きを弁護士や司法書士に任せることで、債務者自身の返済能力や年収、借入額などを総合的に判断し、最適な選択肢を出すことが可能です。
住宅ローンの延滞は放置せず、早めに弁護士・司法書士へ相談しましょう。
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